パソコンやインターネットの普及率が高まってきたのに合わせて、「本の電子化」も急速に進められているようだ。
「本の電子化」とは、一般的に本(紙の媒体に、主に文字情報が印刷された複数のページから構成されるもの)を各種手法でデジタルデータに変換すること(以降、これを「電子化本」と略す)を指す。要は、これまで手にとってページをパラパラめくっていた行為をパソコン上でやりましょう、というものだ。
これを聞くと、「なんだ、面倒くさそうだな」という印象を受ける人も少なくないだろう。しかし、この「本の電子化」は既に世界中で着実に進められており、近い将来には全ての本が電子化され、書籍業界や、本の価値そのものを覆すかもしれない。
現状での身近な「本の電子化」といえば、コンピューターアプリケーションソフトに付属しているマニュアル本。ソフトのマニュアルはとかく分厚くなりやすく、この印刷代もバカにならない。これを電子化してソフトと共にCDに入れることで、製造コストを削減し、製品価格を抑えたりできるわけだ。
他の例としては、「青空文庫」というサイト。約250人のボランティアが、著者権が切れた作品などを電子化して、一般に無料で提供している。
出版業界も負けてはいない。有名出版社8社が共同運営する電子書籍販売サイトでは、電子書籍でしか読めない新作や入手困難になった書籍などを電子化して、「青空文庫」などとの差別化を図っている。
このように電子化された本が果たして利用しやすいか、個人的には「NO」と言わざるを得ない。
電子化本の利用における最大のデメリットは「コンピュータで作業をしながら本を参照できない」点だ。巨大なディスプレイを使用している場合を除いて、一般的には“電子化本の画面”と“ワープロなどのアプリケーション画面”を切り替えながら作業しなくてはならない。これは非常に煩雑で、「パソコンの横に置いた本をめくりながら・・・」という作業とは雲泥の差がある。
また、「コンピュータを動かさないと本が読めない」というのも、本に比べて気軽さに欠ける。
では、何故「本の電子化」は強力に推進されているのか? それはデメリット以上に大きなメリットがあるからだ。
ひとつには前述したように、製造業者や出版社における「製品の印刷コスト削減」で、これは企業のみでなく消費者にも「低価格化」というメリットがある。
また、デジタルデータの利点を活かした「在宅読書」で、図書館や書店に足を運べない人や、そういった施設が近郊にない人が、家にいながらにして本が読めるという、“情報のバリアフリー化”に一役買っている。
他にも、事務所などにおいて多大なスペースを占有してしまう書籍や書類を電子化すれば、巨大な本棚も必要なくなり、狭いスペースの有効活用にも繋がる。
なかでも最大のメリットは「ペーパーレスによる森林資源の保護」で、地球規模の問題となっている森林資源の減少を、かなり緩和させられることが期待されている。
このように多くのメリットがある上、デメリットも現在における技術的・社会的問題に起因しているところが大きいため、今後「本の電子化」は確実に進んでいくだろう。
そうして現状のような本の大量消費は終焉を迎え、(紙でできた)本の商品価値は、50〜100年前のそれに逆行するかもしれない。
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